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2008年 12月 23日
海外で一番知られている日本のサルサ・オルケスタと言えばオルケスタ・デ・ラ・ルス。 NYやプエルトリコやらと海外での公演もこなし、海外のサルサ・スポットで自分に話しかけてくれる人たちが「ラ・ルー(La Luz)を知ってるよ」と話題を振ってくれるのは定番。 でも、彼らは海外へ出たサルサの第一世代。野球で言えば王貞治が大リーグでもその実力を知られてる、って感じか。 今は第二世代。大リーグにはイチローも松井も松坂もいる。本場の中で活躍する選手がいる時代。サルサの世界でも誰かそういう人は出てこんのか?!と心待ちにしていたら、来た! "La Japanese Salsera" / Yoko (El Chance Music/2008) El Diarioの記事を読んでみましょう。El DiarioはNew York Post やNew York Daily Newsとかに並ぶ、NYのヒスパニックでは最大の読者をかかえる新聞。 それが1ページ割いて記事にするのはすごい。フアネスやヨランディータ・モンヘの記事を右隅に押しやっている。 →スペイン語の記事を読んでみたい人はこちら 「Yokoとサルサの関係は一目ぼれってやつだ。そしてその気持ちは時とともにどんどん膨らみ、自分のオルケスタを率いるという夢を叶え、デビュー盤をアメリカでついにリリース。」という出だしで始まる記事。 彼女がスペイン語で歌うことに魅せられ、大学でスペイン語を学び、来日したウイリー・コロンのコンサートでノックアウトされた事、最初のバンド、コンフント・マンボラマで関西のサルサ・ファンには懐かしい"Pata Pata de la Salsa"に出演した時の事、オルケスタ・デ・ラ・ルスの元メンバーからなる"Las Estrellas"で歌った事などが書かれている。 大学卒業と共にアメリカに渡り、マサチューセッツ、そしてニューヨーク、サルサの夢を常に追い続け、機会がある毎に歌い、キャリアを重ねていった。 2004年にエルマン・オリベーラの日本でのギグに同行、その後、チノ・ニュネスのオルケスタに加入し、NYサルサ・コングレスにデビュー。 チノの二枚目のアルバム"Doctor Salsa"(2007)であのレイ・セプルベーダとデュエットし、これがNYやPRでスマッシュ・ヒット! そして今年秋、ついにオルケスタを率いて、デビュー・アルバムをリリース。 サルサの世界でこんな風に海外で、それもNYでたたき上げでデビューした歌い手は過去いないでしょう。すごいよね。 YouTubeでそのステージを見ることができます。 レイ・セプルベダとのデュエット。チノ・ニュネスの2枚目のアルバム"Doctor Salsa"からのスマッシュ・ヒット。ニューヨーク、リンカーンセンターでのステージ。 →YouTubeで見る チノ・ニュネスのオルケスタでのステージ@latin Quarter, NYC →YouTubeで見る チノ・ニュネスのオルケスタでのステージ@West Gate Lounce "La Vida es un Carnival" →YouTubeで見る ジョニー・リベラ@Capacabana, NYC →YouTubeで見る SOBsでのCDリリース記念のライブ →YouTubeで見る ジョニー・パチェーコと共演@West Gate Lounge →YouTubeで見る さて、Descargaに頼んでやっと着いたアルバムを聴いてみた。(Descarga、配送遅い!Disc UnionやLatin Ongaku Netの方が早かったかも。。) 通して聴いた感想は、好きなことやってるなーって。ニューヨークの腕っこきの作る最新のNYの音に、彼女の好きなポンセーニャやウイリー・ロサリオと言ったテイストがしっかり埋め込まれ、とてもタイトでバイラブレな音! 何より、選曲から歌詞の内容、ソネオ(インプロビゼーション)の内容、「歌」に彼女自身の姿がしっかり見えるのがとても素晴らしい。 歌ってとてもデリケートな表現方法だ。人の言葉のニュアンスを人の耳が容易に感じるように、僕らの耳は歌が何かを伝えているか、力をもっているかを聞き分けるのだと思う。 彼女は音符一つへの微妙な音圧のかけ方を選んで言葉を押してくるのだ。だからオルケスタのスピード感に流されないで、自分の思う音を聴く方に伝える事が出来る。 プエルトリコに住んで、ラジオのサルサ局かけっぱなしの生活をした自分には、スペイン語の微妙なイントネーションがずれた日本発のサルサに出会ったときとても居心地が悪いときがある。しかし、彼女のNYのプエルトリカンを中心としたヒスパニックの現場で叩き上げた歌は、スパニッシュの言葉を道具として扱って、その上で自分を表してるのだ。 自分自身で作り上げたソネオもなかなかかっこいい。それは、サルサにとって当たり前のこととは言え、誰でも出来ることじゃない。 バリトン・サックスの効いたスピードと哀感のある1曲目、"Este Ritmo Original”は、デビュー・アルバムにふさわしい気合いをストレートに表している。 2曲目はプエルトリコの至宝、ティテ・クレ・アロンソ作曲、ラ・ルーペが1968年に大ヒットさせた、名曲"La Tirana"。 「あなたにとって私はあなたの物語の中の悪い女、女王様かもしれないけど」と始まる、"強い女"の愛の思いを歌う曲。 強力な個性のラ・ルーペが歌い、インディアも取り上げたボレロの曲だが、ボレロではなくサルサで歌いこむ。 3曲目は、ユーモアあふれる"La Pastillita"。レイ・ビエラの作曲。彼らしい、ペーソスのある曲を変に軽くならず、と言って重くするわけもなく、キュートにスイングさせる。ノベルティー感と言い、アレンジの色とと言い、ちょっと島のグラン・コンボを感じさせる。 4曲目の"Vengo Inspirada”。Guarachera・YokoがNYらしい緊張感と重さの中でかっ飛ばすチューン。踊り手の熱気が見えるよう。 5曲目は"Averiguadas"。トミー・ビジャリニ編曲のフランキー・ルイスの曲のように思わずフロアに出たくなるイントロから。アレンジはウイリー・ルイス。 テーマからはCalleな内容のテーマに入り、モントゥーノ部のソネオも気持ちよく盛り上げてゆく。気がつくとたっぷり踊ってるって感じ。いいすねー、こういう曲。 6曲目は、イスマエル・ミランダの1972年のアルバム"Oprtunidad"から彼自身の作曲の"Las Mujeres son" (女ってのは)"が原曲。オリジナルは男が女の事をを歌う歌詞だが、今回はそれをひっくり返し"Los Hombres son" (男ってのは)思わずにやり。 「男は女性になんでもいいから奉仕するために生まれたのよ。働くために生まれたんだから、つべこべ言わず金稼いで来るのよ・・」と、ガツンと来る歌詞から始まりソネオの中でまたガツとさせるキツイ歌詞。でも今の日本の男のポジションってこんな感じかもね、ははは。 ピアノとアレンジは同じくNYで活躍する中井知恵美。ピアノソロから16小節の後、バックが短い掛け合いに入るところの2小節のサウンドとその後の続き方がかっこ良くて好き。他のアレンジとちょっとテイストが違い、このアルバムのスパイスとなっているのも魅力。 7曲目は"Empezo La Fiesta"。さあ、パーティーが始まった!というのはYokoがいよいよ始まった自分のオルケスタでの真剣勝負の活動を楽しんでいるような曲。NYのスイング。 最後の8曲目"Mi Oportunidad"。Yokoの作品。タイトルの通り、これまでの支えて来てくれた人達への感謝にあふれた優しい曲。 7曲目までの時にドスの効いたスピード感にあふれた面とこの曲でのナチュラルでしなやかな面の両方が彼女なのだろう。 NYで一度彼女と話をしたことがある。その時の印象がこの8曲目まで聴いた時、急に浮かんだ。ナチュラルで自分をもった強さと。サルサや音楽の話で時間を忘れたのを思い出す。 この作品をしっかり支えているメンバーの事もちょっとばかし書いておきます。 まず、ベースのホセ・タバレス。今のNYのバイラーブレな音にはなくてはならないベーシスト。マーク・アンソニーの"El Cantante"やジミー・ボッシュの作品などNY発の音には彼の名前を見ることが多い。 ピアノのエドウィン・サンチェスもNYを支える一人。ジミー・ボッシュやフランキー・ネグロン、プエルトリコのメル・マルティネスの作品などおなじみ。 プロデュース、アレンジ、コロとこの作品でYokoのやりたいことを形にしているのはウイリー・ルイス。レイ・バレット、ラリー・ハーロウ、ラファエル・デ・ヘスース、コンフント・クラシコ、オルケスタ・イマヘン、レイ・セプルベーダ、ジョニー・リベラ、スパニッシュ・ハーレム・オーケストラ、ソネーロス・デル・バリオなどなど参加したバンドは数知れずのツワモノ。 もちろんティンバレスやコンガなどでチノ・ニュネスも参加している。 こんな仲間に囲まれて、しっかりと一歩を踏み出したYoko。なんとかNYでギグを見に行きたいなあ。 彼女のサイト: http://www.yokosalsa.com/
by mofongo
| 2008-12-23 22:43
| Musica/SALSA
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