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2009年 05月 23日
河村要助展"good news" @銀座松屋
河村要助さんの展覧会に行って来ました。

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展覧会の概要や河村さんの経歴はこちらへどうぞ。→
http://www.enjoytokyo.jp/OD004Detail.html?EVENT_ID=255343
http://designcommittee.jp/#history/2009/656

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河村さんは絵と同じくらい、又は時にそれ以上に音楽がなくてはならない人だから、昔から音楽雑誌やLPのジャケット、ライブのフライヤーと、自分が音楽を聴く中でその作品が常に目に前に現れ、魅了され続けてきました。







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特に雑誌、「Good News」「ミュージック・マガジン」などでの、得体の知れない筆圧でこちらを見ているミュージシャンのポートレートは、その素晴らしい色使いとも相まって自分の中に不思議な空気を生み出しています。










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ポートレートで言えば、単なる写真の代わりや似顔絵ではなく、常に絵の中になにか動くリズムがある。音楽家の中に潜むエネルギーを、独特のユーモアと色とタッチで溶け合わせて、ビートを伝えているのに頬が緩み、脳が絵をじっと見つめさせてしまう。



今回の展覧会では、そんな雑誌の表紙の他に、ポスターサイズの連作もあった。

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その中の、”Hot Spring””Indoor Fishing Pond””Japanese Bow”と言った、日本文化をアメリカの50-60年代匂いを振りまいて表現する連作がある。この作品を見ているとき、河村さんのサルサへの思いと音を紹介した名著『サルサ天国』を思い出した。

河村さんのこの本には、とにかくサルサという音楽への熱愛が溢れている。



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河村さんは70年代にサルサという名前が生まれて日本に入ってきた頃からの筋金入りのリスナーだが、今のように情報がネットで取れるような時代ではなかった当時、日本に入ってきた音盤を次から次へと、かつめちゃくちゃよく聴きこまれて、そしてジャケットから中袋まで、限られた情報から、まだ見ぬ音楽家だけでなく、その音が流れている場所、その音を聴く人たちの生活から心意気までを想像する。その素晴らしい想像力と音楽への愛が、この本には溢れてるのだ。






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そんな想像力と、たっぷり聴きこんできた音盤のレコード・ガイドとしての両方の側面があるから、本当にお世話になった、そして今も読み返してお世話になっている本なのです。もちろんミュージシャンのイラストも満載なのも楽しいし。









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しかし、その中で一番頭が下がるのは、そんなにサルサという音楽に入り込んでいるのに、常に「自分はそういう風に想像するだけ」「自分たち日本人には決して分からないかもしれない」という、相手へのレスペクト、違う文化へのレスペクトがある事。










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最近はサルサに関する本も色々出てるし、ネットからの情報もある。でも、それだけに、コピペとは言わないけど、大して勉強してなくてもサイトに「サルサの歴史」なんて掲げる事ができる。それは河村さんの「まだまだ分からないことだらけ」っていう、「謙虚さ=好奇心の連続」とまったく逆の現象だ。









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この間びっくりしたのは、「最近ボビー・バレンティンとラ・セレクタを全部聴きました」って書いてる人が、そのずっと前に「サルサの歴史」なんて書いている事。そんなものが、玉石混合のネットには浮かんでいる。その人のラ・セレクタのデータが間違っていたので、ちょっと指摘してあげたら、「セレクタはほんとに良い!」って書いてたブログの1ページをいきなり削除してしまった。

別にデータの間違いなんて良くある事で、訂正すれば済むのに、「自分が良いと思ってみんなとシェアしたいと書いていた気持ちも含め全削除」って、ちょっと理解しがたい事だった。

きっとたいして好きでもなかったのに、「自分は知ってる」って主張したかったのかも。河村さんの「知らない」「分からない」そして「好きである」事を常に軸足にする誠実さとなんと違うことか。

◆◆◆


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ちょっと話がそれたけど、河村さんのこの”Japanses Cultureシリーズ(?)”は1987年の日本グラフィク展の年間作家賞最高賞をとった年の個展”JOYFUL TOKYO”でも評判だった作品だが、「アメリカ人に日本文化を紹介した絵」は、日本の事をわかってない外国人に、分かってる日本人が説明してみたら、なんと別のイメージを生み出して、「実は自分たちは日本の事、わかっていなかったのでは?」と思わぬ視点を与えてくれる作品だと思うのだ。







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それは河村さんが「日本文化ですら分からない」「世の中にはわからないものがいっぱいある」というレスペクトと「だからおもしろいのだ」という好奇心とそれから生まれる新しい視点を楽しみ、やっぱり分からない事に身もだえし、切なくなり、しかし愛をもって表現する、という立場を取っている事だ。

その立場が「サルサ天国」にも当然一貫してるから、あの絵から本の事が頭に浮かんだのだと思う。







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しばらく健康を害されていたと聞いていたけど、展覧会初日に現れた河村さんと話した人によれば、昔の口調で体調が戻ってきているとの事。

ぜひともまた活動を再開して、フレッシュな刺激を与えて欲しいです。


http://puertorico.exblog.jp/2268432/

by mofongo | 2009-05-23 02:47 | Musica/SALSA


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