2009年 09月 05日
旅日記 09.8 レバノン
トルコ上空から見る茶色の大地が真っ青な地中海の色に変わり、機が着陸態勢に入ると海岸沿いにビルが林立する街が見えてきた。

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ベイルートだ。

ベイルートと聞いて、何を思い起こすだろうか。やはり内戦や2006年のイスラエルとの戦争、パレスチナの難民キャンプとか危険なイメージか。

しかし、古くはフェニキア人の交易で栄え、近くは「中東のパリ」と呼ばれた、緑が豊かでかつ華やかだった歴史をもつ国だ。

そんな国を理解するには、フェニキアの時代から始めて、ギリシャ・ローマの歴史、イスラムと十字軍、中東を分割した欧州の植民地政策、イスラエルの歴史、パレスティナ問題、中東諸国間の問題、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教の事と宿題は山積みだ。でもこの宿題は、一筋縄では行かず、膨大な量だが、学べば学ぶほど興味は尽きない。

そして歴史の中に串刺しにされる、文化や音楽の交じり合いも興味深いことばかり。レバノンの人たちのディアスポラの歴史は、自分が関わる事の多い、プエルトリコや中南米のディアスポラの事と重ねて考えてしまう。

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近代的できれいなベイルートの空港はイスラエルとの戦争が終結して3年ということを表面的には何も感じさせない。
ダウンタウンまでのハイウエーも快適だ。中東とは言え西欧的なライフスタイルを持つ当地では道路沿いの大きな屋外広告でもパリと同様なファッショナブルな女性がこちらを見つめている。貴金属や高層マンションの広告もあり、とりあえず首都には平和が戻ってきているのは分かる。

しかし、ダウンタウンのビルの間を走るとやはり、この街の緊張感が伝わる。内戦時の弾痕が壁に残っている建物も多いのだ。

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到着の晩、友人が父親の家でのパーティーに呼んでくれた。
ベイルートから少し山間に入った古い街。ひい爺さんが立てた3階建ての石造りの立派な家だ。ベイルート近郊の伝統的な様式。当時は1階は蚕から糸を縒り、絹織物を織る工場だったという。をれを1昨年リノベーションして大きなリビングと6ベッドルームという豪華なものにした。

親父さんから色々な話を聞いたが、内戦・戦争時が大変だったとは教えてくれるが、あえて詳しく話してはくれない。


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料理は、焼肉とさまざまなサラダ。たっぷり食って、地元産のビールやらワインやら頂いて、至福の時。










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さて翌日ホテルの朝飯。さすがフランスの影響が色濃いだけあって、おいしそうなペイストリーやクロワッサンやバゲットなどもあったが、狙いは地元のチーズとフール(foul)という豆料理。ありました!

チーズは牛、またはヤギの乳をベースにしたホワイト系。
何種類かつまめるのがホテルの朝食のいいところ。



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そして待ってましたフール。これは2種類のまめをゆでてスープにして、そこにトマトのみじん切り、パセリをのせで最後レモンとオリ-ブオイルで味をキメるという料理。もう何でもオリーブオイルを使うという典型的な地中海的パターンだが、レモンとオリーブ油のバランスが絶妙にうまい。





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元気たっぷりでお客との交渉に臨む。
議論は白熱して、昼飯を食いながら会議を続けることに。

会議室に飼ってきてくれた昼食は、これまたレバノン定番のManaiche/Manakeesh。
このマナイシュ、レバノン風ピタパンを使うが、トルコのように中に挟みこむのではなく、ロールする。
チーズが一番シンプルなパターンで、昔からよく街角で売っているもの。

しかし最近は、ファッショナブルなお店やマクドナルドのような若者も集まるようなチェーン店がはやっている。
今回とってくれたのものそのひとつ「ZAATAR W ZEIT」のもの。

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そして夜。レバノンで超人気、週末の夜は2週間の予約待ちという「CHEZ SAMI」へ。
海岸沿いで海に張り出したテラスからの夕日が美しい。こりゃムードだけでも人気だろう。
しかし、料理は噂のとお素晴らしかった!

飲み物は「アラック」地中海一帯にあるアニス系の水を入れると白濁する系統の酒。フランスのパスティス(ペルノーやリカール)、ギリシャのウゾー、トルコのラク、などの兄弟。これ好物なんです。



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まず前菜は、定番のハンモス(hammus)、タブーリ(tabouli/tabbouleh)、レンズ豆(moujadara)、ブドウの葉の葉のスタッフド・ロール(warak einab bi zeit)などをならべ、ファトゥーシュ・サラダ(fatouche/fattoush)。

そして、メインは魚ニ種類。かます風のさかなを軽くフライしたものと鱸風のさかなを蒸したもの。
カマスの方は頭としっぽを手でちぎり指で腹をさいて骨をとり、レモンまたはハモスで食べる。
もう、新鮮でゼッピン。レモンがお勧め。



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鱸はまったく臭みがなくかつ塩が良いのか、身の深い味をよく引き出していた。至福。

パカパカたべておなかいっぱい。

そしてデザート
最後の締めは「Cafe Blanc/White Coffee。なんだ?と思って待ってたら出てきたのはお湯??
で、飲んでみると、不思議な花の香りがする。聞いてみると、オレンジの花のエキスだとか。
ハーブティーの一種ともいえるが、カフェインがないので散々食べた後、おなかをすっきしさせ、コロっと眠れるそうだ。



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宿に帰ってみると、なにやら音楽がボールルームから聞こえてくる。レバノン・ポップス。なんだ?とチェックを入れると、そう、先週から丁度ラマダンなのだ。ラマダンとは、イスラム教のしきたりでの断食期間。日中は食事はおろか一滴の水も飲んではいけない。しかし、日が沈むと飲食はOKになるのだ。

そしてこの期間、ホテルなどでは夜のラマダン特別ディナー・ショウなどを仕立て、お客を呼ぶ。
人気歌手のステージを見ながら、食事とおしゃべりを楽しむ企画。もちろんお酒は出ないけど、けっこう盛り上がる。特にレバノンは、レバノン・ポップスが充実してるからなのか。

ということで、翌日は、レバノン・ポップスのCD、料理の食材、お菓子などを買い込み、近郊の大鍾乳洞などをチェックして再び、ダウンタウンへ。そして友人と最後色々話す。(緑の蓋のパッケージの写真はくそ甘い、ゴマペーストベースのお菓子Halawa。)

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とても印象に残った事がある。

レバノンはキリスト教とイスラム教が共存し、また各々もいくつかに分かれている。人々は英語、仏語、そしてレバノン系アラビア語を解し、文化の交合の中で生きている。そんな彼に、どの言葉が自分のアイデンティーにとって重要なの?と聞いた時のこと。

彼は「レバノン人は英語・仏語・アラビア語を解すことがアイデンティティーなんだ。自分はキリスト教だけど、イスラムの立場も分かることがアイデンティティーだと思う。こういう複雑な中で生きている、生きていけることこそが自分とこの国なんだ」という言葉だ。




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文化、宗教、言葉・・・単一/純粋ばかりがアイデンティティーじゃない。混合・並列・複雑・共存という現実こそが彼らの真実だというレバノンを改めて思うと同時に、「元祖」「本家」「ルーツ」「純粋」とかが好きな日本人が陥りやすい排他論の危うさと、八百万の神や外来文化の柔軟な(節操なない?)取り込みを得意とする日本人のしぶとさのバランスの事を考えた。
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by mofongo | 2009-09-05 03:06 | Viaje/漫遊記


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