2010年 09月 30日
ビーバップ&キューバップ・ダンスパーティー/菊地成孔@Pit Inn
菊池成孔3デイズ・新宿ピットイン。
第二日目『ビーバップ&キューバップ・ダンスパーティー』今年の新企画。

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曰く「ビーバップ&キューバップだけを演奏するバンドを入れ、司会もDJも入れた40年代アンダーグラウンドスタイルのダンスパーティ」

曰く「ヌルいダンス・ナンバーや、周辺ジャンルであるジャイヴ、ジャンプ、オリジナル曲などひとっつもやりませんぞ。パーカー、ギレスピー、ダメロン、シルヴァーといった、オリジナルビーバッパー/オールドスクーラーによるゴリゴリのビーバップとアフロ・キューバンジャズしか演奏しないバンドのいるダンスフロアを皆様にご提供させて頂きます」というもの。

そして遊びに行くにはこんなガイドラインも。

1) カップル限定(ゲイ、レズも可)

2) 男性はスーツ&タイが義務(下半身は何でも良し。女性はドレスコード無し)



ははは、こういうの過去にないですね。


まずピットインの椅子・机は全部とっぱらってダンスフロアにしちゃうなんて史上初だし、
そして、こっちが本筋だけど、「バップで踊る」パーティーなんて。


バップで踊る、ってあり?、っていう問いはひとつ前の日記に書いた通り以前からのナゾ。「モンク踊り」はあるけどなあ。
→ひとつ前の日記へ

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デ-ヴィッド・W.ストウの『Swing Changes』には、第二次大戦後のタイミングでスイングが急激に力を失った様子が描かれている。

1946-47年にはグッドマン、ドーシー、ハリー・ジェイムス、アーティー・ショウ、レス・ブラウン、ベニー・カーター・・・とビッグ・ネームのオーケストラが軒並み解散した。


理由は戦後の気分とスイングのギャップだとか、コンサート・ホール型へ移行したスイングが本来の魅力を失ったとか色々言われてきた。しかし、ダンス好きのDNAをもったやつらのエネルギーは簡単に消えるかぁ?。みんな何処へ?


日記にマンボのメッカとなる"Palladium"の48年の開店と49年のバップのメッカ"Birdland"の開店の事も書いたけど、パレイディアム(パラディウム)の初期のお客はヒスパニック(プエルトリカン中心)と黒人の混在だったという。

彼らはカーネギーでスイングやバップを聴く層とは明らかに違う、夜遊び好き、ダンス好きな兄さん、姐さん、にーちゃん、ねーちゃんだったろうな、と思う、


でもマンボとジャズはビート感が違う。

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Lindy: Frankie Manning (リンディのトップの踊り手。)とNorma Miller Whitey



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Mambo: Cuban Pete(マンボ時代のトップの踊り手。プエルトリコ人)とMillie Donay


ジャズのスイングビートが好きなダンスマニアは、パーカーやダメロンで踊ってみようともしなかったのか?みんな簡単に引退したのか?「バップはジャズからダンスを奪った」というが、話はそんなにシンプルなのか?

カーネギーでのガレスピーのコンサートにジターバグたちがやってきて調子外れの手拍子はするわ踊るわ騒ぐわで聴衆の顰蹙を買ったという話もあるじゃないか。


ジターバグはかっこいいバップでも踊ってみたのでは?



だけどこのあたりは映像も文献も殆ど見かけず、確かめようもない。
自分で試してみるしかないなぁ。

◆◆◆

まずDJ KIKUCHIでスタート30分、オール・スタンディングの会場は50ペア/100人はいてピットインは満員。

そしてアモーレさん&ルルさん(http://swing-jack.com/) によるリンディの簡単なレッスン。

初心者用リンディのステップ、6カウント(8ステップ?)でのレッスン。8カウントのラテンに慣れている体が戸惑う。何人か踊って頂き体になじませる。

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そしてDJ nadjaの時間。ミッド・スイングがありがたい。ベイシーのシャッフル。皆習ったステップを試してみる。楽んでるね。

フロアは酸欠状態。ダンスを想定しないピットインは換気が弱い。一旦ブレイクして外の空気を入れることに。前例のないイベントはおもしろい。タバコとビールで一服。






いよいよ演奏へ。今日は2バンド。直前までメンバーは伏せられてたが面白い組み合わせで楽しい(敬称略)

まず類家心平(tp)矢野沙織(as)平戸祐介(p)永見寿久(b)、藤井信夫(ds)

そして
佐々木史郎(tp) 津上研太(as) 坪口昌恭(p)須長和弘(b) 服部正嗣(ds)

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矢野沙織(as)は胸のあいたドレスのハード/クールなイメージと太い音、そしていつものキュートな笑顔がかっこいい。今年リリースの9枚目は"Be-bop at Savoy"

佐々木史郎(tp)はDCPRG、オルケスタ・デ・ラ・ルス、熱帯JAZZ楽団、BIG HORNS BEEでおな
じみ。この人ファンなのだ。
津上研太(as)はDCPRG、BOZO、村田陽一orchestra、大友良英NEW JAZZ QUINTET
藤井信夫(ds)はDCPRG、坪口昌恭Trio、菊地成孔Quintet、Giulietta Machine
坪口昌恭(p)、類家心平(tp)は菊地成孔ダブ・セクステットのメンバー
平戸祐介(p)、須長和弘(b)はクラブ・ジャズで人気高い>Quasimode/クオシモードのメンバー。イケメン。
永見寿久(b)は坪口昌恭Quartet服部正嗣(ds)は菊地とNHKドラマ"チェイス"の音楽を担当したメンバーの一人。スガダイローtrio、類家心平trio、Daitokai、Zycos

曲はNow's the time, Confirmation, B-bop, Groovin' high,...Billie's Bounce, Scrapple from the Apple, Reluxin' Camarilloもあったかな、とにかくバップのスタンダード全開。Cu-bopはNight in Tunisia とラストのManteca 。


◆◆◆
さて、バップで踊れたかって?

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ミラーボールが光る中(ピットインってミラーボールなんてあったっけ?)、ダンスフロアはちょっと酸欠状態になるくらい皆踊った。ステップはリンディなカップルもいれば、オフビートで体を揺らす人と色々。

自分はペアのbetty嬢と組んでリンディ基本形でリズムに乗ってみたり、ブレイク・アウェイでどう乗れるか試してみたり。

その日初めて習ったシロートの感想としては、6カウントはミディアム・テンポのナンバーにとても気持ちいいけど、テーマやリフにキメがあったり、ソロのアタックとかに対応できず。アモーレさん&ルルさんが踊ってるのを見ると、音楽のアクセントと会った動き。きっと8カウント/10ステップとかの体得が必要なのか?

でも6カウントの呪縛から離れ、「テキトー6、テキトー8」で踊るとなかなかエキサイティング。耳の横にII-Vの波の繰り返しとレガートがPushしてくる。大波とコードチェンジの細分化が同時に押してくるのだ。


◆◆◆
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そして2バンドの間に、なんと瀬川昌久先生登場!お姿を見るのは何年振りだろう。すごいお元気そう。

瀬川さんは1924年生れ。86才!1950年代、銀行員としてニューヨークに滞在中、当時のジャズ・シーンにどっぷり。パーカーを2回も見たことある人は他にいないのではないだろうか。帰国後ジャズの評論に従事。スイング・ジャーナル等の多くの執筆のほか本も何冊も出されてます。昔、演奏にコメント頂いたことあったなぁ・・。

『ベニー・グッドマン物語』や初期のリンディの映像、そしてクリント・イーストウッド作のチャーリー・パーカーを描いた映画『バード』を使ってスイング/バップとダンスの解説。多分サヴォイかな、曲が"Stompin' at Savoy"だったと思うShim Shamのステップ。この映像なんて初めて見た。

Hellzapoppin' Swing Dance Scene


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お話のあとのステージで奥様と踊っておられました。良い感じだった~!さすが『ジャズで踊って』(清流出版)を出されている見事な踊りっぷり!







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さて、菊地さんは、ブログでは「吹く」と書いてあったと思うけど今回はMC"シンフォニー・シド"に徹して司令塔となっていた。フレームは組み立ててあるものの、プレイヤーも踊らせるバップのステージなんてやった事ないだろうし、全てはフロア次第って実験だからマスターは必要だったですね。

でもフロアはしっかり踊ってて大成功じゃないでしょうか。なにしろ予定調和がどこにあるのかよく分からない中、音を介してのプレイヤーとダンサーの結果としてのコラボだったのが一番よかったかも。

ビーバップ、キューバップのダンスの再現が目的ではなく、リズムが根源的に持っている「動く情動」を試したような今回。それはパーカーのプレーに強くある圧力のある音とリズム。

そしてそれは、バップへの固定観念やらステップの型やらステージとフロアの分離やらを、「ペア」「ダンス」「リズム」という情動から出なきゃ面白くないもので大きくくすぐってみた菊地ワールドの一つだろうかな、と思いました。


そういいう意味で、次回は(あるのか?)フランキー・マニングとペドロ・アギラー(キューバン・ピート)が対決または同時に音に挑戦するような場とか、ペアで踊るかけひきのもやっとした場をもっと今あるジャズから引き出してくれるような絵もみたいなあ。

楽しい夜でした。
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by mofongo | 2010-09-30 08:35 | Musica


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