2010年 10月 18日
チチ・ペラルタ/Chichi Peralta講演会@セルバンテス 10.10.6
もう2週間も経ってしまったけど、忘れないようにチチ・ペラルタの講演会の覚えを書いとこう。


最初にチチの音を聴いたのはJLGの"Bachata Rosa"(1990)だったはず。でもバンドの1メンバーだったから注目もせず。だから初めて意識して聴いたのは97年のソロ・デビュー盤"Pa' otro la'o"。
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当時自分が住んでたプエルトリコでは、まず1曲目の"Amor Narcotico"がFMでヘビー・ローテーションのヒット。それはZeta93やSalsoulと言ったトロピカル局だけでなく、Fidelityのようなソフト・ポップス局も含む大ヒットだった。

ファン・ルイス譲りとも言える洗練されたサウンドと、バラエティーに富んだ曲・アレンジでこのアルバムから"La Ciguapa"、"Procura"、"Limon con sal"が立て続けにヒットした。ほんとに良く聴いたアルバム。当時日本じゃどうだったんだろ。


で、今年の初めにYouTubeに流れた最新のPV"アモール・サムライ(Amor Samurai)"のナゾの日本趣味にびっくり。でもクリスティアン・カストロの旧盤などより全然しっかりした使い方で、これは何だ?とアルバムを捕獲。
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アルバム『De Aquel La'o Del Rio』は軽やかで多様で、キャッチーだけど落ち着いて、瀟洒だけど熱い。そしてドミニカがしっかり香る。今年の夏は休日の朝に良く聴いてた。

そしたら、国際交流基金のプログラムで来日。「ドミニカ共和国とカリブの多極的なリズムの歴史と発展」っていう講演会をやるって。こりゃ早速予約。

◆◆◆

場所は麹町のセルバンテス文化センター。会場のオーディトリアムは立ち見も出る満員。200人はいた。
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まずドミニカの概要・歴史から始め音楽へ。カノイータ(くりぬき太鼓)やアレイト(踊り)とかカリブに共通のインディオの文化、そしてスペイン文化、アフリカ文化の3つの要素の混合が音楽や文化の背景にあることを説明。

音楽ではメレンゲ(Merengue)、バチャータ(Bachata)、パンビーチェ(Pambiche)は当然として、 トゥンバ(Tumba), カラビネ(Carabine)、サランドゥンガ(Sarandunga)、チェンチェ (Chenche)、サパテオ (Zapateo), プリプリ(Pri-pri)、ガガー (Gaga)、 パロ・エチャオ (Palo echao)まで触れる。

そして楽器の説明の後、Angel "Catarey" Andujarに触れパロ、アタバレスからタンボーラへの流れ
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カタレイはJuan Luis Guerraがアルバム『Ojala Que Llueva Cafe』の曲"Angel Para Una Tambora"でオマージュを送ったドミニカのタンボーラの名手。ベネズエラへの巡業中亡くなっている。
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→Catareyの演奏をYouTubeで見る
Catarey Part 1(TV番組のインタビューでさまざまなパターンを披露して説明してくれる映像。面白い!)
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http://www.youtube.com/watch?v=flYPlBIRH2M



Homenaje a Catarey (オルケスタ・ホルヘ・タバラスとの演奏など。 Catareyのソロが楽しめる)
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http://www.youtube.com/watch?v=t0aEg47Oj6M


そして実際にタンボーラを使って、「生」なメレンゲのリズム・パターン、トゥルヒージョ時代のMerengue de Salonのパターン、そしてパンビーチェと叩き分けてくれたのが楽しい。やっぱり音は分かり易い。
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「声パーカッション」で観客にタンボーラのリズムを体感させた後、コンガでラテンのリズムのパターンを解説。ボレロ、そしてサルサ(ここでしっかりジョニー・パチェーコの事に言及!さすが。そしてペドロ・ナバーハを歌う。いいね~)、そしてメレンゲ。

ここで、会場からYolitaさんが飛び入り。彼女はドミニカでタンボーラを習ってきたという女性。彼女のタンボーラの基本パターンにチチがコンガで各々のリズム・パターンを重ねる。
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まずメレンゲ・デ・サロン、そしてサルサがメレンゲに入り込んだパターン、それから複合パターン。おもしろい。

そしていまどきのメレンゲ、シンコペーションしたパターン、カタレイ・アンドゥーハのところで話の出たパロ、アタバレスのリズム

Palo
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http://www.youtube.com/watch?v=PeS54QkFVzg



Fiesta de Atabales
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http://www.youtube.com/watch?v=iYIL31_yQHQ

そしてパロ・マジョールから始めて3つのパターンとタンボールとの組み合わせ。
サルサとの合わせ技やシンコペートするパターンと比べて、とてもアフリカ色の強いパターン。これがなかなか良いんだわ。ココカバ、もともとアロマコというパターンだというが、そんな名前は初めて聞いた。奥が深いなあ。

とヨリータさんのいたおかげで、チチもより突っ込んだ解説をしてくれたのだろう。お得でした。

そのあと「リズム」の面から重要な人としてあげた3人が面白い。
ボビー・マクファーリン、セロニアス・モンク、ラサロ・ロス
ロスが亡くなったのは5年くらい前だったなあ。チチとは交流があったのか。
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そして最新盤からのナゾの日本趣味PVの"アモール・サムライ"。ドミニカと日本の音楽とのフュージョンをメレンゲとバチャータに乗せたとの話があった。レキントの部分を三味線(三線)にし、尺八や吉原久美子さんのボーカルを加えている。
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http://www.youtube.com/watch?v=wwZhTdxD8-w


これについてLatina誌4月号の岡本郁生さんの記事中のチチの言葉として「日本文化にあこがれと強い印象を持っていて、その高みに到達するような作品を作りたかった。それは海外にいる日本人の熱い思いを感じていたから。それはすごく熱く素敵な愛の体験のようだった。そして引き継がれたすべてのものに対する尊敬の念がある。」っていう記述があった。

これを読んで思ったのは、移民、ディアスポラ、出稼ぎ・・・母国から出て働いたり暮らしたりしているすべての国の人たちが抱く、母国への思い。NYを筆頭にアメリカに移住したプエルトリカンの故郷への強い思いが、ヒバロ音楽やボンバ、プレーナの伝統をNYのコミュニティーに残した様に。

"ドミニカンヨーク"と一時呼ばれたNYのドミニカ人も、テキサスのテハーノもLAのチカーノも横浜、神戸、NY、ハバナの中国人も、ガーデングローブ(LA)の韓国人もリトル・サイゴン(LA)のベトナム人も、サンドニ(パリ)のカメルーン人も、アビジャンに働きに出るブルキナ人も、スリナムのインドネシア人も、愛知、静岡、群馬、相模原のブラジレイロもペルアーノも、ブラジル、ペルー、ドミニカの日本人もみんな同じ。

自分も10年以上母国から離れて暮らしたことがあるから(大した苦労はしてないけど)その時の事も重なる。
相手の自文化に対する熱い思いに感動すると、改めて自分の文化を見つめたりする。


チチは、音楽にもテクノロジーの進歩は不可避だけど、これはリスクと隣り合わせ。デジタル化やサンプリング、ミックスは時にルーツや伝統に打撃を与える可能性もあり、その文化・背景をレスペクトしつつ新しい事をする事が大切だと強調していた。
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フュージョンやパーカッショニストへのアドバイスででも、「フォルクロールを尊重しつつフュージョンをやるべき。音、リズムをよく勉強し、それを損なうことなくフュージョンをする。」とか「パーカッショニストは楽器だけでなく、今までの音を勉強し、音をつないで伝えていくことが大切」と同じ点を強調していた。

そういえばチチの来日中に訪ねた先の方がいくつかブログを書かれていた。

ドミニカ共和国親善大使のチチ・ぺラルタさんが来店
http://ameblo.jp/taminouta00/entry-10670834822.html


京都の和太鼓・芸能集団「BATI-HOLIC」
http://blog.livedoor.jp/bati_holic/archives/51874368.html

色々チチにとっても有意義な来日だったようだなあ。

最後のQ&Aで、ベネズエラ大使館のレイナさんがビージョに触れたのはさすがでした。
ドミニカからベネズエラに渡って、ベネズエラのダンス音楽をひっぱりまくったビージョ(ルイス=マリア・フロメタ)。

そういういろんな糸でつながった人たちが重ねてきた色々な音楽を、たまたま偶然今聴けている不思議を感じた夜。
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by mofongo | 2010-10-18 23:07 | Musica


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