2006年 12月 10日
旅日記・プエルトリコ06.11(4) クリスマスの音
クリスマス向けの新譜からちょっと紹介します。

まず、バンコ・ポプラール(プエルトリコ最大の銀行)の年末恒例企画盤です。今年はずばり”VIVA NAVIDAD”。CDのジャケにあるようにクリスマスのパランダを楽しむための曲を満載した盤。

オフィシャル・サイトはこちら


b0015362_1233471.gif
しかし、さすがバンコ・ポプラールの作るもの。シンプルに楽しむ事が出来る作品であると同時に、プエルトリコの音楽の伝統と多様さを組み合わせています。

ヒルベルト・サンタ・ロサとビクトル・マヌエル、エドニータ・ナサリオというビッグ・ネームで真ん中を押えながら、今のリズムであるレゲトン側からは重鎮ビコCを、ロックからは今年話題のブラック・グヤバを加え、パランダに欠かせないヒバロ側からはキケ・ドメネチのクアトロとこれからの世代である超若手のルイス・サンズ(クアトロ)やレイシャ・コロン(トローバ)をプッシュするという具合。

b0015362_12523873.jpg

選曲も泣けます。1曲目のタイトル曲、ビクトル・マヌエル歌う”Viva Navidad””Biriquin “ Riveraの曲。11曲目の”Asalto Naviden^o”と共にヒバロ/パランダの有名な曲。エル・グラン・コンボのファンなら知ってますね。1971年の”Nuestra Musica”に収録です。

2曲目のレゲエな”Bomba para afincar”は「ラップ&レゲエ」、つまり今のレゲトンの胎動期にビコCが”アンダーグラウンド”の世界でスターとなった有名な曲。彼の名刺みたいなもん。一方で13曲目はなんとベニート・デ・ヘススの曲をやってます。Benito de Jesusはプエルトリコが産んだ数あるボレロの名トリオの1つ、トリオ・ベガバハーニョ(Trio Vegabajan~o)のリーダーで作曲家。8曲目でサンタ・ロサの歌う”Cantores de Navidad”は皆に愛されてるヒット曲ですね。

3曲目、エドニータ・ナサリオがルイス・サンス君のクアトロを従えて歌う”Lemento del Campesino”はRoberto Coleの曲。Coleは1930-40年代に活躍したマヤゲス出身の人。トリオでボレロをやったり、自分のバンドを持ったりですが、ラファエル・ムニスのオルケスタなどへも作曲家としても多くの作品を提供しています。この”Lamento~”は”Romance del Campesino”と対になったような曲と共に彼の愛されている曲の1つです。

b0015362_1254811.jpg
5曲目の”Levantale”、ヒバロでいいですねー。作曲のHerminio De Jesusはホセ・ノゲラスと共に、プエルトリコのスペイン系伝統の1つ”TUNA”の名門”Tuna de Cayey”で活躍した人。70年代には多くのアーティストにパランダな曲を提供。そんな中でこの”Levantale”もViecente Carattiniがヒットさせた曲の1つ。サンタ・ロサなんかも彼の曲を取り上げてます。

7曲目の”Hermoso bouquet”はアメリカ本土側でプレーナのヒットを飛ばしたマヌエル・ヒメネス”カナリオ”の曲。

b0015362_1255054.jpg
一方9曲目の”La Verdad aka Le Lo Lai”もNYのヒバロ界(?)を語るのに欠かせないPepe Castilloの作品。ペペはポンセ出身。モン・リベラやコルティーホのピアニストとしてスタート、以後島とNYを行き来し、最近でも島ではBomplene、NYではEstampa Criollaなどのグループで活躍すると共にNYのいろんなレコーディングにも顔を出してます。

という具合に、島の音楽に欠かせない要素や作品をしっかり押えながら、今のアーティストのテイストでエンタテイメントとしても楽しませてくれ、なおかつこれからを支える若いアーティストもサポートする。そんな、ことを続けているバンコ・ポプラールってなかなかだと思います。

--------
もう一枚はプエルトリコに無くてはならぬベテラン&トップ・オルケスタのエル・グラン・コンボ・デ・プエルトリコの新譜、”Arroz con Habichuela”

b0015362_1563789.gif
タイトルから良いですね。島になくてはならない定番の”メシ”、アロス・コン・アビチュエラ。ジャケは全員が厨房スタイルでおちゃめに決めてます。

潮風と波を感じるような、爽快なリズム、ラフィー・モンクロバの今を感じさせるメロディーラインの3曲目、5曲目から、グアヒーラなノリにヒバロな歌のタイトル曲、あまりに気持ちの良いフリオ・カストロの7曲目、骨格のしっかりしたラモン・ロドリゲス(!)のメロディーの8曲目などの曲を貫くのは、グラン・コンボでしかない色。

NYの音のように華やかに煌くビルでも風雲急を告げるサイレン音でもない。もっと一人一人が歩くようなテンポ、強い日差しの昼間と波音が湿って暑い空気の奥から聞えてくる夜、クリオージョの香りが切なくかつ心地よい音。

b0015362_12453176.jpg
この偉大なエル・グラン・コンボの愛称の一つが"Los Mulatos del Sabor"
ムラートというのは世界史で習った人もいると思うけど、ラテンアメリカで欧州系とアフリカ系の混血の人々を呼ぶ言葉。

グランコンボの立ち位置っていうのはブラックだけでもホワイトだけでもない、混血が一般的なカリブ地域の音。クリオージョ(クレオール)と言う言葉と重複する部分も多い。

このアフリカからやって来た偉大なリズムの遺産と欧州からやって来たメロディーや哀愁感の遺産、そしてそれが交じり合い長い間熟成されたムラートな、クリオージョなサボール。この絶妙なバランスがプエルトリコとプエルトリコの要素を強くもつサルサという音楽をラテン全体に押し出しているパワーなんだと思います。

そして、そのエル・グラン・コンボの音は、常に島の一人一人と、その生きている様子を捉え、ゆっくり歩いて行く。だからこそ、絶大な支持を受けるのだと思います。

b0015362_12455637.jpg(新譜発売のサイン会に精出す”Los Mulatos del Sabor”。サイン会なんて無くても全然売れるのに、やっぱ庶民派ですねぇ。♪
[PR]

by mofongo | 2006-12-10 23:21 | Musica/SALSA


<< 旅日記・プエルトリコ06.11...      旅日記・プエルトリコ06.11... >>