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2007年 06月 08日
第24回 サルサ国民の日(1) / Dia Nacional de la Salsa
音には必ずその音楽家が、時代が、歴史や社会が通ってきた要素が組みこまれている。新しいサウンドが古い音を否定して乗り越えようと、逆に今の人が古いものを再現しようとも。時間は音楽の絶対的な一部なのだ。

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NYのラテンなら、スイング・ジャズからビバップ、アフロ・キューバン、マンボ、R&Bやジャズ、ロック・・・そんな中、60年代末のNYラテンひとつの大きなうねりがサルサと呼ばれた。

「サルサはキューバで生まれた」とか「サルサはキューバの音楽だ」なんて勘違いをしている人は、今時もういないとは思うけど、「サルサはNYで生まれた」とだけ単純にいうのも誤解を生むだろう。

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情報の少なかった20-30年前の日本ならともかく、今やNYは気軽に行ける場所だし、プエルトリコやカリブの事もネット発も含め情報も増え訪問もしやすくなった。

そんな中で「NYが生んだサルサ」と言う前に、実はカリブやプエルトリコが暖めてきた40-60年代の音楽シーンのNYへの直接の影響も少しずつ見えて来ている。

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つまり、サルサの前のプエルトリコはボンバプレーナヒバロセサル・コンセプシオンコルティーホを語るだけじゃ足りないのだ。そしてそれは、サルサが生まれる前に、プエルトリカンが大多数だったNYのラテン・コミュニティーが、聴き、踊り、演奏してきた音の一部は、サルサの誕生に深い関係もあるからだ。

(*写真は上から、オルケスタ・セサル・コンセプシオン、ラディスラオ・マルティネスのグループ、ファニア・オールスターズ)

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さて、そんな音の内、良く知られている「ヒバロ」という素朴で力強く、かつ哀愁感の強い「歌」の心はサルサのセンティミエントに欠かせない要素を植えつけている。

プエルトリコでは毎年3月にサルサの大コンサート「サルサ国民の日/Dia Nacional de la Salsa」が開かれる。今年24回目のコンサートのテーマは「ヒバロ」だと聞き、出演者リストを見て、「これは行かねば!」と思い立ってサンファンへ飛んだ

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プエルトリコの3月は夏の始まりと言って良いくらい暑い。この暑さの中、8時間にも及ぶ野外のコンサートに3万人以上の人が集まるのだ。島のサルサ・ファンだけでなくラテン各国やアメリカ本土からも人が駆けつける。

毎年サルサに貢献のあったミュージシャンを称える場となるこのステージ、今年は4人。ラモン・ロドリゲスラフィー・レアビサミー・マレーロイスマエル・ミランダだ。

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出演者のざっとした紹介は2月のブログに書いたとおり。
→2月のブログ・ページへ



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コンサートは今地元で最も注目のダンス・チーム"ルンバ・デ・フエゴ"のパフォーマンスで幕を開け。
ラファエル・ピオンのこのチームはコングレスで来日してるから日本でも知ってる人は多いかも。

そこらじゅうで踊り、楽器を叩くやつらが発生し、会場は気温以上に熱く高揚している。

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さて、トップ・バッターのパポ・ココテ&ヌエボ・モントゥーノが登場。"El Nuevo Montuno Llego"でスタートだ。

1968年にベーシストのロベルト・ベリオスが結成。ロベルト&ヌエボ・モントゥーノとして人気を博したオルケスタをボーカルのパポ・ココテが引き継いで活動している。

ロベルトはエディー・パルミエリのプロデュースした、ラテン・ロック/ファンク・バンドの"Cafe"にいた。その為かエディーもやってる"Cafe"も取り上げてるし、モントゥーノにも影響を感じる。が同時にラフィー・レアビと共通する、非常にヒバロなフィーリングがあるんだ。これはエディーにはないものだ。

曲は"La Margarita", "El yerbero del barrio", "Mun~eca" と続き 、最後の曲は"Monina y Ramon"。これ、彼等の一枚目からのヒットだけど、未だにラジオでかかる。だから、やっぱり会場でも若いやつらが歌いだしたりする。スターターからして、実に濃い演奏で涙する。

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続いての登場はオルケスタ・ラ・マサクレ。フリート・カストロが作ったオルケスタで70年代に島で活躍。後に80年代以降ニューヨークをベースに大人気を博したコンフント・クラシコにつらなるメンバーが最初に組んだオルケスタだ。

この日の為に集まったオリジナル・メンバーはラモン・ロドリゲスティト・ニエベスフリオ・カストロ

このメンバーが一同に集まるのはめったに見られるない。ファンは大いに沸く。大ヒット“El pregonero”でスタートし “Domingo me llaman”, “Ya tu no enganas”と続く。

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途中でラモン・ロドリゲスがオマージュを受ける。
NY-PRのサルサを好きな方はこの人の事を是非覚えておいて欲しい。1977年の"The Artist"、1979年の"Los Amigos"などジョニー・パチェーコの作品で名前を見つけた人もいるだろうし、NYやPRでの数々の作品に作曲者、プロデューサー、コロやマラカスなどのクレジットを見た人もいるだろう。なんといろんな所で、サルサにヒバロの風味を振りまいて来た事か。

Dolor, esquina, miseria”, “Barriguita” と続き“El piraguero”でしめくくる。

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プエルトリコのサルサのラジオ局、例えばこのコンサートを主催している"Z-93"でもライバル局の"Salsoul"でもそうだが、未だに昔からの名曲をよくかける。その中で、名曲はさらに絞り込まれ"クラシコ/スタンダード"となる。その中で若い世代は古い曲である事をことさら意識せずに、良い曲を受け入れる土壌が出来ているんだ。

そんな環境があって、肩にタトゥーを入れレゲトンが似合うような兄ちゃんも、このラ・マサクレのヒットに声援を送るわけだ。

( パート2に続く)

by mofongo | 2007-06-08 23:40 | Musica/SALSA


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