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2007年 11月 02日
久しぶりにラリー・ハーロウが来た。 言うまでもなく、ラリーは60年代後半から70年代を通してのサルサのど真ん中に位置するFANIAの最重要アーティストの一人。 ファニアのアーティストの志向/嗜好は実に多様。その中で彼のベーシックな部分はキューバ音楽から始まっている。ジョニー・パチェーコもそんな傾向が強い。 面白いのは、ファニアの中でキューバへの傾倒が強かったこの2人はキューバ人でもプエルトリコ人でもない、というところだ。 60-70年代に「サルサ」という名前が誕生した現場にはキューバ人はほとんど関係なかったから、2人がキューバンでなかったのは当然としても、プエルトリカンでもなかったと言う点もポイント。 キューバのハバナやプエルトリコのサン・ファン、ポンセは18-19世紀から経済/商業的背景により音楽の交流が顕著だった。だからプエルトリコ人にとってはキューバの音楽はレスペクトの対象ではあるが、改めて「お勉強」するものでもなく、同時に自分たちは自分たちの音楽を持っていた。 一方、パチェーコはドミニカのサンティアゴ・デ・ロス・カバジェロスの生まれ。このドミニカ第2の海に面さぬ町は初期のローカルなメレンゲ(メレンゲ・ティピコ・シバエーニョ~ペリーコ・リピアーオ)の里であるシバオ地方の中心。 そこで11才まで暮らしニューヨークに引っ越す。そしてNYでキューバ音楽やマンボに本格的にぶつかりチャランガへと続く。 またハーロウはNYのユダヤ人として育つ中で、ラテン音楽と出会い、キューバに旅してノックアウトされ、3年間ほど住んで「勉強」した青年時代を持っている。 つまり二人ともキューバ人でもプエルトリコ人でもないがゆえにキューバ音楽を「勉強」した過去を持つが、それがキューバ音楽へのこだわりを持つ1つの原因になっているのだろう。 この辺は、我々の日本にもある。特にラリーのケースは80年代後半、キューバに行ってそれ以降キューバ一辺倒になった日本のミュージシャンたちのケースと似てるね。 でも、ラリーの音の面白さはNYに帰ってしばらくしてから始まる。"キューバ音楽伝統主義者"の彼もNYに帰ればR&Bやジャズは相変わらず一杯、ブガルーもあればロックもある。なんといっても周りのラテン系ミュージシャンはプエルトリカンばかりだ。 そんな中でロックをやって全米ツアーしたり(Ambergris)、色々トライする中で「彼のサルサ」が出てくるのだ。 今回のライブの1週間前、丁度プエルトリコから友人のぺぺが来日した。自分が島に住み始めたときからのサルサ友達、そして生粋のプエルトリカンだ。 彼の学生時代は70-80年代。だからサルサは彼にとってあたりまえのもの。 「ホーム・パーティーでかかる音は、とにかくサルサだよ」、という高校時代を過ごしたぺぺ。 ⇒YouTubeで"Marvin Santiago: Juego a la Jicoteaを見る (ベネスエラの土曜夜の人気TV番組より) TVではグラン・コンボやファニア、ボビー・バレンティンやロベルト・ロエナが、そしてトミー・オリベンシアやウイリー・ロサリオがダンサブルな音を放っていた。 その頃の話を聞くのはとても楽しい。車の好きな彼はチェビー(シボレー)の中古をチューンし、週末は仲間やガールフレンド達を乗せ遊びに出る。そしてそんな中に普通にサルサがある、というのは今のプエルトリコと変わらない。カー・オーディオから流れるFM局で一番強いのは今でもレゲトンよりサルサ専門局だしね。 そんなペペだから、日本から帰る前の晩にラリー・ハーロウが楽しめると知ると迷わずと言って来た。 「予約よろしく」 今回のラリー・ハーロウはフロントにアダルベルト・サンティアゴとヨーモ・トーロというファニアの重鎮を配し、バックはNYの手堅いメンバーで固め、フロントの歌はアダルベルトに加えて、ルイシート・ロサリオとエモ・ルチアーノを置く。10年以上前からラリーと縁がある気心知れた2人。総勢は13名。 ラリー・ハーロウ/Larry Harlow(P) アダルベルト・サンティアゴ/Adalberto Santiago(Vo) ヨモ・トロ/Yomo Toro(Cuatro) レイ・マルティネス/Ray Martinez(B) ルイシート・ロサリオ/Luisito Rosario(Vo) マック・ゴルホン/Mac Gollehon(Tp) ルイス・カーン/Louis Kahn(Tb/Vln) エモ・ルチアーノ/Emo Luciano(Vo) リッチー・ヴィルエット/Richie Viruet(Tp) チェンボ・コルニエル/Chembo Corniel(Conga) フランク・フォンテイン/Frank Fontaine(Sax/Fl) ジェフ・ロペス/Jeff Lopez(Timb ロヴィー・バウソ/Lovie Bauzo(Bongos) ちなみに、このバンドのメンバーは全員ソロ・アルバムを出している実力者ぞろいなのだ。 そして、多くがプエルトリコ系。サルサはこれでなくっちゃね。 ステージが始まった。あれ?フロントにルチアーノがいないぞ? ええと、この曲なんだっけ?”Se formo la Rumba”だっけ?ルイシートの歌、いいじゃない。 まだ、客席は暖まらない感じだけど、腰がムズムズする。 そして2曲目、ルチアーノが出てきた。楽屋で寝てたか?(^^) おお、”Senor Sereno”だ。オーケストラ・ハーロウの名盤「ライブ・イン・クアッド」のおなじみ曲。 思わずペペと歌っちゃう。 ルイシートがさかんにヨーモを気遣ってコミュニケーションを取る。 ヨーモはもう足が弱っていて、ステージまでは車椅子なのだ。でも、クアトロ弾くとパリパリ! Larry Harlow, Junior Gonzalez - Señor Sereno 1972 NY ⇒YouTubeで見る Orquesta Harlow en Vivo 35 años "Señor Sereno" Cano Estremera ⇒YouTubeで見る そして次は、アダルベルトがリードを取る。そのお約束通りの曲、と言えば・・・。 ラリーが紹介する 「今日はハロウイーンだよね。ハロウイーンと言えば、仮面(マスク=マスカラ)!」 そう”Quitate la Mascara” レイ・バレートのところに在籍してたアダルベルトの大ヒット曲。 これもペペと歌いまくり、机たたきまくり、終わったら「ボリークアー」とか叫ぶし・・・・隣の人はうるさかったかも・・・。 RAY BARRETO Y ADALBERTO SANTIAGO - QUITATE LA MASCARA ⇒YouTubeで見る FANIA ALL STARS-QUITATE LA MASCARA ⇒YouTubeで見る 何杯目かのグラスも空になり、曲目がはっきりしなくなる・・・・。ルイシートは客席とコミュニケーションを取り床がどんどん熱くなるのがわかる。 ええと、あとなんだったけな、そうそう、”El Bohioボヒオって、インディオの伝統的な家の事。クーバ味たっぷりな曲だねえ。"~♪Si, Sen~or♪~"を客側から掛け合うのがお約束の定番。 El Bohio/Larry Harlow Latin Legend Band ⇒YouTubeで見る (このYouTubeはワシントンでのわりと最近のライブ。フロントはルチアーノとルイシート。リッチー・ヴィルエットのTrumpetソロ、フランク・フォンテインのフルート・ソロなど今回のメンツをかなりだぶってるのでムードが分かると思います。) 途中で、赤木りえさんが飛び入りし、フランク・フォンテインとフルート・バトルしたり、カルロス菅野さんがコンガ叩いたりとステージを盛り上げる。 そして、(Las mujeres de) Mayari。これも「ライブ・イン・クアッド」。 “マジャリの女の子はかわいいよなー”って曲。こっちもつい歌っちゃうんだよねー。 サルサは踊りの為のメトロノームでも、ただのリズムパターンでもないよなってつくづく思う。歌であり曲であることがあって、歌詞を歌って、リズムに体が引っ張られて、どんどん高揚してくる気持ちがあってこそ。 ⇒YouTubeで見る 最後はたしかLatinos Larry Harlow and Latin Legends of Fania (Larry Harlow) 1曲目はややクールだった空気が、最後はしっかり盛り上がった。今回はラリーの熱さと言うよりヨーモのムード、そしてフロントの二人だったと思う。これからも2人のことは要チェック! Emo luciano/La Cartera ⇒YouTubeで見る Luisito Rosario ⇒YouTubeで見る ぺぺと楽屋に行く。 ラリーやアダルベルトとちょっと話し、ルチアーノとルイシートのところへ。 ぺぺ「いや、よかったよ。」 ル1「あんがと、あんがと、あ、プエルトリカンだよね?(喜)日本に住んでるの?」 ぺぺ「旅行で来てんだよ。トゥルヒージョ・アルトに住んでる」 ル2「おお、トゥルヒージョ!そう!エルマーノ!がしっ(抱擁)」 いつもの事ながら、ボリクア同士って一挙に盛り上がるなぁ。 ル1「あんたもボリクア?国の旗もって」 モフォ「いやいや、ハポネスだけどさ、グアイナボに住んでたんよ。この夏も里帰りしたりし」 ル2「おお、グアイナーボ!そうか!エルマーノ!がしっ(抱擁)」 アヤー、住んでただけでも十分盛り上がるね。 などとさわいでいる内に、ラリー、ルイス・カーン、アダルベルトなど、順番にぼちぼち引き上げてゆく。 車椅子のヨーモはニコニコして残ってる。 モ「師匠お久しぶりです。プエルトリコでお会いして以来で。クアトロ練習してるんですがちっとも上手くなりません」 ヨ「そうかそうか、とにかく頑張んなさい。そうだ、弾いてみよう。そこのクアトロとってくれ」 師匠のクアトロは年期モノのマイク&イコライザー付。螺鈿細工の装飾が美しい ヨ「モフォ、これくらいならは易しいだろ。♪~♪」 モ「♪Vamos a bailar la murga, la murga de Panama♪師匠、エクトル・ラボーは最高っす」 ヨ「ふむふむ(^^)、じゃさ、これはどうだ。」 モ「♪Quitate tu pa' ponerme yo♪」 ヨ「わはは、じゃこれは?♪♪~」 ルイシートがにこにこして寄ってくる。 ル1「アサルト・ナビデーニョ!Ya van a empezar las fiestas♪」 モ&ヨ「おー、ボリークア!」 それからアギナルドの曲のさわりを何曲かやって盛り上がる。NJ生まれのルイシートもトロバドールに変身だ。まるでここはNY・エルバリオ! 気づいたら本物のボリクア・ぺぺはあきれてどっか行ってた。 モフォ「師匠、お元気で!またNYあたりでお会いしたいです」 やっぱり、ボリクアのサボール感じずしてサルサはありえんなあ。 日本じゃこのサボールの香りがする音を聴くのはとても難しもんね、オルケスタでもDJでも。 そんな意味でもラリー・ハーロウに限らず、もっと島やNYの音がもっと気軽に来てくれないもんかなあ、と思うんよ。ぺぺ。 ぺぺ「そうかぁ。じゃほんとに日本じゃ難しいか、試さにゃな」 モ「んん?」 ペペ「去年行った、ほらEl Cafe Latinoと行けなかったSudadaと。このまま帰って寝たら飛行機逃すって。オールナイトでしょう、やっぱり。では参りましょう♪♪」 そう言うあんたみたいの、やっぱり日本にはいないと思うんですけど・・・・
by mofongo
| 2007-11-02 23:13
| Musica/SALSA
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