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2007年 11月 02日
Larry Harlow @Billboard 07.10.31
久しぶりにラリー・ハーロウが来た。
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言うまでもなく、ラリーは60年代後半から70年代を通してのサルサのど真ん中に位置するFANIAの最重要アーティストの一人。

ファニアのアーティストの志向/嗜好は実に多様。その中で彼のベーシックな部分はキューバ音楽から始まっている。ジョニー・パチェーコもそんな傾向が強い。

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面白いのは、ファニアの中でキューバへの傾倒が強かったこの2人はキューバ人でもプエルトリコ人でもない、というところだ。

60-70年代に「サルサ」という名前が誕生した現場にはキューバ人はほとんど関係なかったから、2人がキューバンでなかったのは当然としても、プエルトリカンでもなかったと言う点もポイント。

キューバのハバナやプエルトリコのサン・ファン、ポンセは18-19世紀から経済/商業的背景により音楽の交流が顕著だった。だからプエルトリコ人にとってはキューバの音楽はレスペクトの対象ではあるが、改めて「お勉強」するものでもなく、同時に自分たちは自分たちの音楽を持っていた。

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一方、パチェーコはドミニカのサンティアゴ・デ・ロス・カバジェロスの生まれ。このドミニカ第2の海に面さぬ町は初期のローカルなメレンゲ(メレンゲ・ティピコ・シバエーニョ~ペリーコ・リピアーオ)の里であるシバオ地方の中心。

そこで11才まで暮らしニューヨークに引っ越す。そしてNYでキューバ音楽やマンボに本格的にぶつかりチャランガへと続く。

またハーロウはNYのユダヤ人として育つ中で、ラテン音楽と出会い、キューバに旅してノックアウトされ、3年間ほど住んで「勉強」した青年時代を持っている。

つまり二人ともキューバ人でもプエルトリコ人でもないがゆえにキューバ音楽を「勉強」した過去を持つが、それがキューバ音楽へのこだわりを持つ1つの原因になっているのだろう。

◆◆◆

この辺は、我々の日本にもある。特にラリーのケースは80年代後半、キューバに行ってそれ以降キューバ一辺倒になった日本のミュージシャンたちのケースと似てるね。
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でも、ラリーの音の面白さはNYに帰ってしばらくしてから始まる。"キューバ音楽伝統主義者"の彼もNYに帰ればR&Bやジャズは相変わらず一杯、ブガルーもあればロックもある。なんといっても周りのラテン系ミュージシャンはプエルトリカンばかりだ。

そんな中でロックをやって全米ツアーしたり(Ambergris)、色々トライする中で「彼のサルサ」が出てくるのだ。

◆◆◆

今回のライブの1週間前、丁度プエルトリコから友人のぺぺが来日した。自分が島に住み始めたときからのサルサ友達、そして生粋のプエルトリカンだ。

彼の学生時代は70-80年代。だからサルサは彼にとってあたりまえのもの。

「ホーム・パーティーでかかる音は、とにかくサルサだよ」、という高校時代を過ごしたぺぺ。


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⇒YouTubeで"Marvin Santiago: Juego a la Jicoteaを見る
(ベネスエラの土曜夜の人気TV番組より)



TVではグラン・コンボファニアボビー・バレンティンロベルト・ロエナが、そしてトミー・オリベンシアウイリー・ロサリオがダンサブルな音を放っていた。

その頃の話を聞くのはとても楽しい。車の好きな彼はチェビー(シボレー)の中古をチューンし、週末は仲間やガールフレンド達を乗せ遊びに出る。そしてそんな中に普通にサルサがある、というのは今のプエルトリコと変わらない。カー・オーディオから流れるFM局で一番強いのは今でもレゲトンよりサルサ専門局だしね。

そんなペペだから、日本から帰る前の晩にラリー・ハーロウが楽しめると知ると迷わずと言って来た。

「予約よろしく」


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今回のラリー・ハーロウはフロントにアダルベルト・サンティアゴヨーモ・トーロというファニアの重鎮を配し、バックはNYの手堅いメンバーで固め、フロントの歌はアダルベルトに加えて、ルイシート・ロサリオエモ・ルチアーノを置く。10年以上前からラリーと縁がある気心知れた2人。総勢は13名。

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ラリー・ハーロウ/Larry Harlow(P)
アダルベルト・サンティアゴ/Adalberto Santiago(Vo)
ヨモ・トロ/Yomo Toro(Cuatro)
レイ・マルティネス/Ray Martinez(B)
ルイシート・ロサリオ/Luisito Rosario(Vo)
マック・ゴルホン/Mac Gollehon(Tp)
ルイス・カーン/Louis Kahn(Tb/Vln)
エモ・ルチアーノ/Emo Luciano(Vo)
リッチー・ヴィルエット/Richie Viruet(Tp)
チェンボ・コルニエル/Chembo Corniel(Conga)
フランク・フォンテイン/Frank Fontaine(Sax/Fl)
ジェフ・ロペス/Jeff Lopez(Timb
ロヴィー・バウソ/Lovie Bauzo(Bongos)

ちなみに、このバンドのメンバーは全員ソロ・アルバムを出している実力者ぞろいなのだ。
そして、多くがプエルトリコ系。サルサはこれでなくっちゃね。

◆◆◆

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ステージが始まった。あれ?フロントにルチアーノがいないぞ?
ええと、この曲なんだっけ?Se formo la Rumbaだっけ?ルイシートの歌、いいじゃない。
まだ、客席は暖まらない感じだけど、腰がムズムズする。

そして2曲目、ルチアーノが出てきた。楽屋で寝てたか?(^^)
おお、Senor Serenoだ。オーケストラ・ハーロウの名盤「ライブ・イン・クアッド」のおなじみ曲。
思わずペペと歌っちゃう。

ルイシートがさかんにヨーモを気遣ってコミュニケーションを取る。
ヨーモはもう足が弱っていて、ステージまでは車椅子なのだ。でも、クアトロ弾くとパリパリ!


Larry Harlow, Junior Gonzalez - Señor Sereno 1972 NYb0015362_025944.jpg
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Orquesta Harlow en Vivo 35 años "Señor Sereno" Cano Estremera
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そして次は、アダルベルトがリードを取る。そのお約束通りの曲、と言えば・・・。

ラリーが紹介する

「今日はハロウイーンだよね。ハロウイーンと言えば、仮面(マスク=マスカラ)!」

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そうQuitate la Mascara
レイ・バレートのところに在籍してたアダルベルトの大ヒット曲。
これもペペと歌いまくり、机たたきまくり、終わったら「ボリークアー」とか叫ぶし・・・・隣の人はうるさかったかも・・・。


RAY BARRETO Y ADALBERTO SANTIAGO - QUITATE LA MASCARA
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FANIA ALL STARS-QUITATE LA MASCARA
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◆◆◆

何杯目かのグラスも空になり、曲目がはっきりしなくなる・・・・。ルイシートは客席とコミュニケーションを取り床がどんどん熱くなるのがわかる。


ええと、あとなんだったけな、そうそう、”El Bohioボヒオって、インディオの伝統的な家の事。クーバ味たっぷりな曲だねえ。"~♪Si, Sen~or♪~"を客側から掛け合うのがお約束の定番。

El Bohio/Larry Harlow Latin Legend Bandb0015362_1551271.jpg
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(このYouTubeはワシントンでのわりと最近のライブ。フロントはルチアーノとルイシート。リッチー・ヴィルエットのTrumpetソロ、フランク・フォンテインのフルート・ソロなど今回のメンツをかなりだぶってるのでムードが分かると思います。)

途中で、赤木りえさんが飛び入りし、フランク・フォンテインとフルート・バトルしたり、カルロス菅野さんがコンガ叩いたりとステージを盛り上げる。

そして、(Las mujeres de) Mayari。これも「ライブ・イン・クアッド」。
“マジャリの女の子はかわいいよなー”って曲。こっちもつい歌っちゃうんだよねー。
サルサは踊りの為のメトロノームでも、ただのリズムパターンでもないよなってつくづく思う。歌であり曲であることがあって、歌詞を歌って、リズムに体が引っ張られて、どんどん高揚してくる気持ちがあってこそ。

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最後はたしかLatinos
Larry Harlow and Latin Legends of Fania (Larry Harlow)
1曲目はややクールだった空気が、最後はしっかり盛り上がった。今回はラリーの熱さと言うよりヨーモのムード、そしてフロントの二人だったと思う。これからも2人のことは要チェック!

Emo luciano/La Cartera
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Luisito Rosario
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ぺぺと楽屋に行く。
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ラリーやアダルベルトとちょっと話し、ルチアーノとルイシートのところへ。

ぺぺ「いや、よかったよ。」
ル1「あんがと、あんがと、あ、プエルトリカンだよね?(喜)日本に住んでるの?」
ぺぺ「旅行で来てんだよ。トゥルヒージョ・アルトに住んでる」
ル2「おお、トゥルヒージョ!そう!エルマーノ!がしっ(抱擁)」

いつもの事ながら、ボリクア同士って一挙に盛り上がるなぁ。
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ル1「あんたもボリクア?国の旗もって」
モフォ「いやいや、ハポネスだけどさ、グアイナボに住んでたんよ。この夏も里帰りしたりし」
ル2「おお、グアイナーボ!そうか!エルマーノ!がしっ(抱擁)」

アヤー、住んでただけでも十分盛り上がるね。

◆◆◆

などとさわいでいる内に、ラリー、ルイス・カーン、アダルベルトなど、順番にぼちぼち引き上げてゆく。
車椅子のヨーモはニコニコして残ってる。
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「師匠お久しぶりです。プエルトリコでお会いして以来で。クアトロ練習してるんですがちっとも上手くなりません」
「そうかそうか、とにかく頑張んなさい。そうだ、弾いてみよう。そこのクアトロとってくれ」

師匠のクアトロは年期モノのマイク&イコライザー付。螺鈿細工の装飾が美しい

「モフォ、これくらいならは易しいだろ。♪~♪」
「♪Vamos a bailar la murga, la murga de Panama♪師匠、エクトル・ラボーは最高っす」
「ふむふむ(^^)、じゃさ、これはどうだ。」
「♪Quitate tu pa' ponerme yo
「わはは、じゃこれは?♪♪~」


ルイシートがにこにこして寄ってくる。
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ル1アサルト・ナビデーニョ!Ya van a empezar las fiestas♪

モ&ヨ「おー、ボリークア!」

それからアギナルドの曲のさわりを何曲かやって盛り上がる。NJ生まれのルイシートもトロバドールに変身だ。まるでここはNY・エルバリオ!

◆◆◆

気づいたら本物のボリクア・ぺぺはあきれてどっか行ってた。
モフォ「師匠、お元気で!またNYあたりでお会いしたいです」

やっぱり、ボリクアのサボール感じずしてサルサはありえんなあ。
日本じゃこのサボールの香りがする音を聴くのはとても難しもんね、オルケスタでもDJでも。

そんな意味でもラリー・ハーロウに限らず、もっと島やNYの音がもっと気軽に来てくれないもんかなあ、と思うんよ。ぺぺ。

ぺぺ「そうかぁ。じゃほんとに日本じゃ難しいか、試さにゃな」
「んん?」
ペペ「去年行った、ほらEl Cafe Latinoと行けなかったSudadaと。このまま帰って寝たら飛行機逃すって。オールナイトでしょう、やっぱり。では参りましょう♪♪」



そう言うあんたみたいの、やっぱり日本にはいないと思うんですけど・・・・
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by mofongo | 2007-11-02 23:13 | Musica/SALSA