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2010年 03月 28日
ミシェル・カミーロ&チューチョ・バルデス@Bluenote 10.3.25
言わずもがな、二人ともうまい・速い・ラテンという冠が良く付くアーティスト。今まで別々に何度も聴いて来た二人が一緒にやると異なる個性がどう出てくるのか、技術の上にある二人の個性をもっとはっきり聴きたいなぁ、なんて所を楽しみにしていた。

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ブルーノート初日のセカンド。席はチューチョの背中が良く見える所。

ゆるりと始められたマイナーな一曲目。 "La Comparsa"だ。 1912年、エルネスト・レクオーナが弱冠17歳の時の作品『Danzas Afro-Cubanas』の中の一曲。チューチョの作品でも"En El Teatro Colon"や"Calle 54"でも取り上げられている。

テーマのモチーフがラヴェルの様に、そしてドビュッシーの様に展開されたあと、左手はレクオーナの演奏そのままのダンソン風のパターンが奏でられテーマに入る。かなり頭を食って入ったので、既にワインで酔っ払い気味のアタマが一挙に緊張した。









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長調に展開するテーマは古き良きキューバの香りがして好きなメロディー。

カミーロもぴったりつけてくる。そしてテーマが1周したあとは、カミーロがジャージなメロを出し、チューチョがすぐ追っつけて展開。リチャード・ティーを連想するようなリズミックなパターンからすぐ、クラシカルなフレーズに引き戻し、高音域からの逆落とし。カミーロが下からチェイスをかける・・・と言った具合。楽しんでいる風。しっとりとレクオーナに敬意を表すようなテーマに戻るという緩急自在のプレーのスタートだった。




二曲目はバラード。かわいらしいメロディーとロマンチックなコード進行、そしてそこを時に高速で駆け抜ける。あ、なんだっけ?この曲。えーと、あ"El Dia Que Me Quieras"だ。レクオーナやガルデルと言ったラテンの先輩へのレスペクトを感じる選曲。二人はひたすら素直でキュートな音を重ねる。

そして高速なリズムパターンに不穏なメロディーが乗る。なんだ?あ、"Caravan"だ。出たぞ早弾きの応酬。ファン・ティソールの書いたこの曲の前半はモード的で自由度が高い素材。二人は好きにぐるぐるかき混ぜて遊ぶ。

途中からハーフテンポに落としてスウィングに、そして元に戻したり、ファンキーなベース・パターンと遊んだり。
そんな早弾きアドリブを聴く楽しみは、2人の間がフッと空く一瞬。お互いに瞬時に反応し次のパターンを突っ込んで行くから。思わず耳が開く。盛り上がりの中でカミーロは速度とジャズ・イデオムで走った一方、チューチョがやわらかでクラシカルなラインを選んだ瞬間があった。こういう違いが楽しい。

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次はスローな哀感のある曲。カミーロのソロか。えーと、この曲は聞いたことあるぞ。たしか彼のブルーノートのライブに入ってたオリジナルだ。("Twilight Glow")。



静かに終わったソロのあと、アップテンポのマイナーなインプロからスタート。この進行はおなじみ"枯葉"だ。2人ともまっとうなソロが続く。片方がウオーキング・ベースをカバーしたりコードでドラム・フィル的な突っ込みしたり、と受け渡しが続く。

フレーズやリズムのイデオムには特段ラテンなものはないし、大きくアウトしてゆくこともない。だけど執拗な畳みかけやタッチの中に生まれる波みたいなものこそが彼らの一流のラテンだよなあ、とか思う。




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そしてディジー・ガレスピーのブルース"Birks Works"。ちょっとモンクを思わせる重ね方。ブルージーに進むかと思えばワン・コーラース全部同音のトリルで通すような圧迫のチューチョ。サンドバルの高速ハイノートでの正確なタンギングでのロング・フレーズを連想してしまう。そんな時カミーロは邪魔しないけど個性的なバッキングで対応。面白い。


この後あたりからよく曲順を覚えていない。ワインも手伝って音の中で良い気持ちになって来た。
チューチョのソロもあり(スタンダード風のコード進行だが曲目思いつかず)、高速ブルー・ボッサあり。

高速ブルーボッサは枯葉と同傾向のからみ。でも進行がもっとシンプルなだけに、フレーズにリズムの遊びが増える。ハーフテンポに落として、モントゥーノのフィールをちらつかせてくれたり。


ここでラザロ・リベロ(b)、ホァン・カルロス・ロハス(ds)、ジャロルディ・アブレウ(conga)が加わる。

マイルスの"Solar"だ。早いジャズ/ラテン・フィールで走る。リベーロのソロではドラムがルンバ・クラーベを入れてくる。
ジャロルディーそしてロハスのソロ、受け渡しは楽しい。会場はとても盛り上がった。お客さんは満足。

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最後は二人でBesame Mucho。これはひたすら落ち着いた熱情。しっとりと結びました。

◆◆◆

終演後、友人たちと「すごかったね」と話しながら、それは何なのか考える。それは高速でのインタープレイの迫力とか面白さ、見事さ自体よりも、それを緩めた時にふっと出てくる個性、チューチョのセルバンテスからレクオーナにつながるようなキューバの香り、そしてカミーロの硬質なジャージーさとラテンの甘みの溶け合いみないなものに思えた。

それは結局二人の個性の違いの部分より、ジャズのイデオムをたっぷり使いつつ"スウィング"とは縁の遠い彼らの音楽の共通点、ラテンであることを一番楽しんだ気がします。



酔っぱらって帰る頭にラ・コンパルサのメロディが回ってた。
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by mofongo | 2010-03-28 01:18 | Musica
2010年 03月 25日
新刊『中南米の音楽---歌・踊り・祝宴を生きる人々』
今月30日に中南米の音楽が好きな人には注目の良い本が出ます!
おすすめです!

石 橋 純 編
『中南米の音楽---歌・踊り・祝宴を生きる人々』
東京堂出版●定価(本体1,800円+税)
ISBN978-4-490-20667-8 C0073
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内容はこんな」感じ

%%%% オビ・コピーより %%%%

音にあふれる【祝祭の大陸】を読む

サンバ,タンゴ,「コンドルは飛んでいく」,「コーヒールンバ」だけじゃない。陽気なダンス音楽の歌詞に鋭い批評がこめられる。生活の喜びと悲しみをリズムとともに表現し,音楽を通じて社会変革を夢見る。多民族・複数文化が共存・共鳴しあう音楽大陸=中南米。その歴史をひもとき,現場の鼓動を伝える。達人9名による鮮烈な案内書。

中南米の人々が音楽を「生きる」姿を,現地における調査・研究・演奏・制作に精通した専門家が,幅広く,奥深く紹介。

[目次より]
第1章●概説・中南米の音楽――その歴史と特徴[石橋 純]
第2章●サルサと北米ラティーノの音楽[岡本郁生]
第3章●米墨,ボーダーランドで鳴り響く音楽[宮田 信]
第4章●キューバの音楽をめぐる継続性と断絶性[倉田量介]
第5章●ダブ――南国ジャマイカ発の人工的音響[鈴木慎一郎]
第6章●ベネズエラ――更新されつづける伝統[石橋 純]
第7章●ペルー大衆音楽の発展略史[水口良樹]
第8章●ボリビア音楽――その歴史と地域性[木下尊惇]
第9章●ムジカ・セルタネージャ――ブラジルの田舎(風)音楽[細川周平]
第10章●鉛色時代の音楽――独裁政権下のアルゼンチン・ロック[比嘉マルセーロ]

国際交流基金企画「異文化理解講座」より

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オビのコピーにあるようにこの本はもともと2006年の5月から7月、そして2007年の1月から3月、国際交流基金企画「異文化理解講座」より生まれたものなのです。

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ベネズエラ研究の第一人者、東京大学教養学部の石橋純先生が世話人となって行われた講座で、僕も毎回楽しみに受講というかお話を聴きに行ったのでした。いやお話しだけじゃなくて、当然音も聴かせて映像も見せて、時にナマ演奏も入るという贅沢な企画。

すごく面白かった。そして友人の岡本さんが誘ってくれたおかげで、毎回講座の後の飲み会にも参加して、その場の濃い話の素晴らしかったこと。講師の方はその道の「達人」であるとともにその音楽と文化を愛しているわけです。そしてそれと同時に自分の知らない/詳しくない音楽に対するレスペクトと好奇心がとってもある。だから自分の回でない時ににも参加され、飲み会でいろんな話をするのです。セルタネージャとホローポとワイノとサルサを横一線でワイワイ話すのです。自分もサルサやボンバ・プレーナ・ヒバロで加わったりできたのも楽しかった。

ちょっと筆者を自分の知っているレベルでご紹介します。
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石橋純さん は東京大学の先生でベネズエラ研究の第一人者。ベネズエラのクアトロも弾いちゃったりする方です。著書には『熱帯の祭りと宴』(つげ書房新社)、『太鼓歌に耳をかせ』(松籟社)、『カリブ・ラテンアメリカ音の地図』(音楽之友社)などがあります。最後の本は、僕も書かせて頂いてたり。



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岡本郁生さん は、『ラティーナ』誌の連載や記事、CDのライナーや各種雑誌の記事でご存じの方も多いと思います。新宿のやくざも道をあけるドスの効いたダンディーさですが、FM番組の制作を本業とされてます。著書には上の『カリブ・ラテンアメリカ音の地図』(音楽之友社)や『米国ラテン音楽ディスク・ガイド50's-80's』 (リットー・ミュージック)などがあります。

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宮田信さん はインディペンデント・レーベルMUSIC CAMPを主宰されている音楽プロデューサーで、チカーノ文化・音楽に関してはこの人をおいていないと断言します。『Music Magazin』、『Remix』、『ローライダー・マガジン・ジャパン』などによく執筆もされていて『カリブ・ラテンアメリカ音の地図』(音楽の友社)にも書かれています。

倉田量介さん は東京大学の講師をされていて文化人類学やポピュラー音楽研究をされています。

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鈴木信一郎さん は信州大学の先生でジャマイカを中心にカリブ英語圏ずっぽりの研究と同時にジャマイカ音楽、レゲエからダンスホール、ダブともうすごいです。著書には『レゲエ・トレイン』(青土社)、『シンコペーション - ラティーノ/カリビアンの文化実践』(エディマン)、そして『カリブ・ラテンアメリカ音の地図』(音楽之友社)にも書かれています。

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水口良樹さん はペルー音楽の研究家であり、大学の講師もされている文化人類学の先生でもあります。2003年から毎年の日本ペルー協会主催のペルー音楽の講演会のほか、色々な講座をもたれているのでご存じの方も多いかも。それに日本でも希有なペルーのクリオーヤ音楽バンド「ペーニャ・ハラナ」での音楽活動!もすばらしいです。

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木下尊惇さん はボリビア音楽の音楽家で30年近く前に単身ボリビアに渡り、ギタリスト・作曲家として活躍。現地でベストテンのトップを飾ったり、映画音楽を担当したりフォルクローレ音楽の教授として教えたりでボリビア大使館から勲章までもらわれたり。日本でもNHK BS-hiの音楽を担当されたりしてます。『ボリビアを知るための68章』(明石書店)の音楽の章を書かれています。

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細川周平さん は国際日本文化研究センターの教授で音楽研究、特に近代日本音楽史、日系ブラジル文化を専攻されています。著書には『サンバの国に演歌は流れる』(中公新書)、『シネマ屋、ブラジルを行く』(新潮選書)、『トロピカーリア』(音楽之友社)や『ユリイカ』への執筆などがあります。



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比嘉マルセーロさん はフェリス女学院大学の教授で社会学、文化人類学、特にアルゼンチンにおける日本人移民、都市文化研究をされています。著書には『南北アメリカの日系文化人』(人文書院)などがあります。


と、言った達人たちですが、音楽とその文化に触れたその文字の間からは、メロディーやリズムと皆さんの熱い音への愛が伝わってくると思います。
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by mofongo | 2010-03-25 01:12 | Musica